Mの法則(えむのほうそく)
競馬予想家、今井雅宏氏が発見した競走馬の法則。人間により人為的に管理されたサラブレッドは、病的なストレスを常に抱えている。病を抱えたサラブレッドが先頭で走り抜くためには、新鮮な気持ちを持っていなければならない。ではどのような状況で、馬はストレスを打破できる新鮮な心身状態になりうるのか? このことを、動的なダイナミズムの中で捉えたのがMの法則である。Mは、横軸(メンバー間のストレス、その異端性)、時間軸(競走馬のリズム、ショック療法)、中心点(馬の構造分析、M3)からなり、馬の絶対能力ではなく、関係性から馬券の本質に迫る理論なのである(「ひらけ!ちびごま」より抜粋)。 ちなみにMの法則のMは精神(Mind)、消耗(Minus)、慣れと繰り返し(Mannerism)から。
M3タイプ(えむすりーたいぷ)
競争馬の心身構造をS(闘争心)、C(集中力)、L(淡白さ)の3つに分類したもの。先頭がその馬の主な心身構造になる。タイプの()内はその馬の影の性質となり、時に表の性質より前に出てくることもある。ただし、基本的に()を持っている馬は中途半端で、決定力に欠ける。M3タイプは血統や戦績から推測し、判断する。
C系(しーけい)
他馬との相関関係の中で走ろうとする性質を持つタイプ。混戦向きで強い相手にしぶといが、弱い相手には集中力を発揮しづらい。主なオプション:多頭数、内枠、短縮。主なC系血統:ステイゴールド、フジキセキ、マイネルラヴ 母父メジロマックイーン、母父トウカイテイオー
S系(えすけい)
気性がきつく、一本調子に走ろうとする性質を持つタイプ。離して逃げる馬や短距離ダートで活躍している馬に多い。主なオプション:短縮、ショック、特殊馬場。主なS系血統:ネオユニヴァース、ダイワメジャー、タニノギムレット 母父ブライアンズタイム、母父トニービン
L系(えるけい)
使い込むと脆いが、リフレッシュすれば能力を出し切れる性質を持つタイプ。自分のペースで淡々と走ると強い。主なオプション:少頭数、外枠、延長。主なL系血統:ゼンノロブロイ、マンハッタンカフェ、アグネスタキオン 母父Caerleon、母父Cozzene
M系(まとまりけい)
どんな条件でも無難にこなすが、極限レベルでは通用しづらい性質を持つタイプ。近年特化型が減り、このタイプが増えた。主なオプション:内枠、休み明け、人気落ち。主なM系血統:ディープインパクト、キングカメハメハ、シンボリクリスエス 母父Danzig、母父Nureyev
LC系(えるしーけい)
L主導でもただのL系と違い、交互のタイミングが合えば強い相手や根幹距離でもしぶとく頑張れる。差し馬は外差しが合う。「外枠」、「延長」、「逃げられなかった逃げ馬」。得意距離は2200・2500・1400・1600。代表馬:エイシンフラッシュ
CL系(しーえるけい)
C系よりも気のよさがあるので仕上がりは若干早い。基本はC主導なので叩いて集中していくリズムだが、肝心な所でモロさが出るトライアルタイプが多い。極限のレースでは好走してもなかなか勝ちきれない。得意オプションは「内枠」、「軽い延長」、「アップの軽量ハンデ戦」。得意距離は1800・1400・2000。代表馬:ハッピーパス
LS系(えるえすけい)
SL系と似たような不安定さを持っているが、高齢になっても走る持ち味がある。休み明けは滅法強く、よく延長で逃げられなかった逃げ馬の場面で走る馬も多い。斤量は全く気にしない。「少頭数」、「外枠」、「巻き返し」、「ダウン」が得意。1400の高速馬場も強いが、ダートはS主導よりも意志が弱いので全体的に湿った砂を好む。得意距離は1400・1700・1800。代表馬:ウインバリアシオン
SL系(えすえるけい)
S主導で不安定さを常に持っている。ただ連チャン期は疲労の限界に達するまで安定して頑張る。問題なのは連チャン期を過ぎた後。ピーク過ぎると不振に陥りやすく、生涯消耗度という点ではLS系よりも早い。ゆえに早熟と呼ばれる馬はこのタイプが多い。この手のタイプは不振期乗り越えた後の自分より弱い相手で復活できる。オプションは「短縮」、「特殊馬場」。逃げ・先行馬は高速や不良馬場で、差し馬は内をつけない不器用さがあり小回りの荒れた馬場で強い。気性がきつく大幅延長は苦手。得意距離は1700・1400・1200。代表馬:リーチザクラウン
SC系(えすしーけい)
チャンピオン型で大レースに強い。S主導なので闘争心が強く、それでいて精神構造が若い内はしっかりしているので連勝も出来る。とにかく「勝つ意欲」が旺盛で、好調期には圧勝も多い。しかし歳を取るにつれ次第に交互の不安定リズムになりやすい傾向がある。阪神・中山で強い。得意距離は1600・2000・1200。根幹距離で強いのはCS系と同じだが、CS系よりも距離適性が短い所に位置する馬が多い。オプションは「多頭数」「短縮」「内枠」「アップ」など。連チャン期過ぎると「交互」。代表馬:ウオッカ
CS系(しーえすけい)
Cの肉体的危うさ・突き抜ける意志をSが補い、Sの不安定さをCが補う。チャンピオン決定戦に強いのだが、肉体面でSC系より弱く急坂はそれほど得意としていない。またSC系よりも好調期間は長い。「競り合い」に関しては最も強い。得意距離は1600・2000・2400の根幹距離と1800。得意条件は東京コース、オプションは「多頭数」「内枠」「アップ」など。ピーク過ぎるとリズム戻すまで時間が掛かる。代表馬:ストレイトガール
ストレス(すとれす)
接戦後や、ショックを使って激走した際に溜まりやすい。人間同様、競走馬もストレスが溜まれば体調も優れず、走れなくなる。どころかサラブレッドは慢性的に胃潰瘍とまでいわれるほどストレスを感じやすい。 ストレスを保有している人気馬を切って穴を狙うのがMの基本スタンス。
量(りょう)
その馬の気の良さを決める。体力が肉体面の言葉なのに対し、こちらは精神面の言葉。量が多いと延長に対応したり、惨敗から平気で巻き返したり、休み明けから走れたりする。主にL系が持つ性質。
体力(たいりょく)
体力があると強引な競馬ができるし、重などのパワーの要る状況にも強くなる。タフな状況を走りぬく手助けとなる。体力のある馬は捲って強かったり、時計の掛かる馬場を得意とすることが多い。
ショック(しょっく)
馬に前走とは違う種類の刺激を与えて、激走を促すもの。その馬のタイプにあったショックが必要なので、きっちりと見極めたい。
例)短縮、延長、馬場替わり(芝からダート、ダートから芝)、位置取りショック(逃げられなかった逃げ馬等)
鮮度(せんど)
新鮮さの度合いを差す言葉。Mの法則においては競争馬が一線級相手との対決が少ない状態を指すことが多い。広義に解釈すれば、条件替わり、休み明け、初めて逃げるなども含まれる。鮮度があると我慢が利いたり、得意な条件でなくても走れたりする。派生版に距離鮮度などがある。ずっと1600mを使っていた馬が初めて1200mを使った場合、1200mに対して距離鮮度があると使う。また生涯でその条件、クラスの経験が少ない馬を「生涯鮮度が高い」などと表現する。
少頭数(しょうとうすう)
11頭程度までの頭数の少ないレースのこと。M3タイプのL系(淡泊さ)が好む。
中頭数(ちゅうとうすう)
12~14頭程度の、少頭数でも多頭数でもない頭数のレースをいう。
多頭数(たとうすう)
15頭程度以上の頭数の多いレースのこという。M3タイプのC系(集中力)が好む。
アップ(あっぷ)
前走より相手が強くなる臨戦のこと。条件戦→重賞等の格上挑戦が最もポピュラー。C系のオプションとして語られることが多い。
ダウン(だうん)
前走より相手が弱くなる臨戦のこと。G1→G3の格落ちや、混合戦→牝馬限定戦など。L系のオプションとして語られることが多い。
逆位置取り(ぎゃくいちどり)
主に短縮(ペースアップ)で前走より前に行く、延長(ペースダウン)で前走より後ろに下がることを指す。Mの法則において苦条件の一つとされる。
短縮ショッカー(たんしゅくしょっかー)
短縮Sとも。前走で今回より長い距離を走っている。今回距離以下の距離で連対歴あり。前走3角5番手以内かつ、7カ月以内に、今回芝なら芝を、ダートならダートを走っている。これらの条件を満たしたとき、短縮ショッカーと名付けられる。99年重賞馬連回収率600%を超を叩き出している(ひらけ!ちびごまより抜粋)。
逃げられなかった逃げ馬(にげられなかったにげうま)
Mのショックの中でも最もポピュラーで最も破壊力があるものになる。逃げは有利な脚質だが、前走逃げている馬だと率がガクッと下がってしまう。本来逃げていた馬が前走馬群という苦を味わい、再度逃げた時の破壊力はとてつもない。
連チャン期(れんちゃんき)
連勝(圧勝含む)で一気に頂点にまで上り詰めるときの状態のこと。S系が持つ性質の一つ。ただ連チャン期の反動は大きく、連チャン後に休みを挟むと別馬になっていることも往々にしてある(不振期)。(例:ショウワモダン、アサクサデンエン、アロンダイト)